もう⋅⋅解放⋅⋅して⋅⋅⋅下さい
✮✮紬SIDE②
完全に身体が
元通りになったわけではない。
まだ、ふとした瞬間に
両親を思い出し涙が流れる。
お店の時には、結月が
家では、旭が
私の異変に気づいてくれて
寄り添ってくれる。
本当に二人には感謝しかない。
alkuの仕事も一人でも
できるようになってきた。
結月は、無理はしないで
と、何度も言ってくれるが
大切なお店だし
大好きな仕事だから
心が落ちついていられる
今日は、結月に先に休憩へ
入ってもらった。
お客様がお店に入ってきて
可愛い···とか
これ、欲しい·····とか
こんなのあるんだ·····とか
言う声を、笑顔をみるだけで
ワクワクして、嬉しくなる。
そんなお客様の中に赤ちゃんを
抱いている女性が見えた。
「何かお探しですか?」
と、声をかけると
「あっ、はい。
主人のお茶碗と箸を」
「ありがとうございます。
こちらは、いかがでしょうか?」
と、数点を出してお見せすると
「わぁ、良いですね。」
と、言って頂けから
「実は、私の主人も
こちらの色違いを使っています。」
と、言うと
「本当ですか?
それでしたら、こちらを頂いて
帰ります。」
と、言われたから
「あっ、すみません。
押し付けてしまいましたか?」
「いいえ。良いなぁと
思いましたから。」
と、言われたから
「ありがとうございます。」
と、言ってラッピングをして
お渡しする。
支払いをする時に
赤ちゃんが目を開けて
にっこりしたから
「とっても可愛いですね。」
と、言うと
「うふふっ、ありがとうございます。」
と、言いながら頭を下げて
帰っていかれた。
私もお客様に頭を下げる。
結月が戻ってきて
休憩を交代する。
このお客様は、
この日から何度もalkuに
お見えになってくれた。
まさか······
この人が·····
旭の相手だとは
知る由もなかった。