もう⋅⋅解放⋅⋅して⋅⋅⋅下さい

✮✮紬SIDE


あれからひと月が過ぎ
佐川さんがalkuに見える事はなく

私の中では警戒?怖さ?は
なくなっていた。
それは、結月も同じだった。

その日は、結月が先に上がる日で
(二人で、早番・遅番の勤務体制)
私はレジを締めて
戸締まりをしていた。
「あっ、もう終わり?」
と、声をかけてきたのは、佐川さん。
「ええ、すみません。
   今、お帰りですか?」
と、驚きを隠しながら訊ねると
「そうなの。
この子の慣らし保育を
午前と午後を交代にやって
一日預ける様にと。」
「そうなんですね。
葵君も保育園児ですね。」
と、話していると
「紬。」
と、旭。

迎えにきてくれたの····と、言いかけた時
「ほら、葵。パパが来たよ。」
と、佐川さんが葵君を抱き上げて
言うから
私は、佐川さんのご主人が来たと思い、
周りをキョロキョロしていると
「紬さん、まだ入籍していないけど
葵の父親の太田 旭。
葵が生まれても顔も見に来ない
薄情な男なのよ。」
と、佐川さんは棘のある言い方を
しながら、私を見る。


  私は·····やっと·····

      理解が····できた·····


佐川さんは、旭の浮気相手で
葵君は········旭の···子供·····?····


「つむ···ぎ··」
旭の苦しげな声に
反応が出来ずにいると

「ごめんなさいね。
紬さんには、悪いと思ったけど。
旭が、あまりにもぞんざいな扱いを
私と葵にするから。」
と、言う佐川さんには、
私に対して本当に
悪いと思っているようには
みえなかった······

「そんな顔しないでよ。
    子供がいるのよ。」
と、旭に向かって言う佐川さん。

旭を見ると睨むように
佐川さんを見ている。

私は、この場から離れたくて
「旭。······子供には罪はないよ。
      佐川さんと話して。」
と、言いながら
alkuの戸締まりをして
荷物を持って
二人の横を通り過ぎる
「紬!」
と、旭に呼ばれるが
振り向く気力もなく歩いた。

どうやって帰ったのか
わからない······

その上、どうして良いのか
わからずに結月に連絡した。

結月は、直ぐ駆けつけてくれて
私の荷物を詰めてから
私をマンションから連れ出した。

今日は、結月の家に泊めてもらう
健太さんが出張なのは、
朝、出勤した時に聞いていた。

結月が何か食べないと駄目だと
雑炊を作ってくれたが
ほんの少ししか食べる事が出来なかった。

「お風呂でもシャワーでも
良いから入ってきな」
と、言われて簡単にシャワーを浴びた。

シャワーから出ると
結月に飲み物を渡された。
ブランデーだ。
カーッと喉がなるが
「何も考えずに寝な。」 
と、客室に布団を用意してくれた。
「結月、ごめんね。」
と、言う私に
「眠れなくても横になってな。
店の事は、心配しなくて良いよ。」
と、言ってくれた。

布団に入り横になると
いつの間にか眠っていた。
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