もう⋅⋅解放⋅⋅して⋅⋅⋅下さい
「紬·····つむぎっ···」
止めて!
私を呼ばないで······
「紬、目を覚すのは嫌か?怖いか?
紬が、嫌ならこのままで良い
俺は、紬が生きてさえいてくれたら」
誰?嫌?怖い?
でも·····この声······は·····
それから、別の声が·····
「紬、私の大事な娘」と父の声
「······おと···うさん······
おか·····あ·····さん······」
「紬、辛いなら一緒に居よう」
と、父の隣にいる母
とても悲しい顔をしている
「ごめんなさい。私が弱いばかりに。」
両親にこんな顔をさせていると
思い伝えると
二人は、首を横に振りながら
「あなたを一人にしてしまった事が
悲しいの。紬は決して弱くない
人が良すぎるだけ。
ほら、良く聞いて。
あなたを大切に思っているのは
私やお父さんだけではない。」
と、言う母に
困った顔で父を見ると
「私と母さんの大事な大事な娘だ。
幸せになりなさい。」
と、言うと父と母は、
私をそっと抱きしめてくれた。
それは、とても温かくて
私はそのまま瞳を閉じた。
(今でも、開いているわけではない。
心の中のこと)
次に目を開けると
白い天井が見えた。
ここは?
手に違和感があり
指先に目を動かすと
誰かに手を握られている
ベッドの上に腕を置き
その上に頭を置いて寝ているようだ。
髪色が······伊織?······
指がピクリと動いてしまい
その頭が直ぐに動いて
目と目が合う·······と
伊織は、目尻を下げて笑った。
「伊織?」
「ああ、わかるか?
先生を呼ぶから待って。」
と、言われた。
すると白衣を着た男性と女性が
やってきて
私が起きているのを確認すると
ホッとした顔をした。
「気分は、悪くありませんか?
どこか、違和感があるようなことも
ありませんか?」
と、ゆっくり訊ねられて
「はい、たぶん。」
と、答えると
「あなたは、十日間意識が
戻らなかったのです。
でも、良かった。
もう、大丈夫です。
食事が三食取れましたら
退院しましょう。」
と、言われて
さっそくお昼から食事
おかゆが出るらしい。
それから、少し検査をするとの事。
先生達が出ると
入れ替わりに伊織か入ってきた。
携帯を私に見せながら
「黒田、いや違う高橋に連絡した。」
と、言い
「大丈夫か?」
と、訊ねる伊織に
「いつ、日本に?」
「くろ、高橋から連絡をもらって
五日目に。
すまん、直ぐに来れなくて。」
と、頭を下げる伊織に
「バカっ。相馬君が忙しいの
知ってるから。
無理させて、こちらこそ
ごめんなさい。」
と、言うと少し悲しい顔をしたが
私の頭を撫でてくれた。
そこにバタバタと走る音が
ガラーっ
結月は、病室の扉を開き
紬を見るとパラパラと涙を流した。
「結月、ごめんね。
また、心配かけちゃったね。」
と、言う紬を抱きしめて
「良かった。本当に良かった。
このまま目を覚まさないかと。
目を覚まさないより
心配かけられている方が
何倍も良いから。」
と、言う結月に笑ってしまった。
それから結月は、
お店を二人に任せてきたからと
慌ただしく戻って行き
「夜に来るから」
と、言った。
伊織は、
「昼食が来るまで寝ろ。」
と、言うが
寝れるわけないと思っていたが
私はそのまま眠ってしまったようだ。