もう⋅⋅解放⋅⋅して⋅⋅⋅下さい
✩✩旭SIDE
結月ちゃんから
病院を出された俺と母親
無言でタクシーに乗り込む
何度も、何度も、振り返る俺に
母親は、何も言わずに
待ってくれていた。
自宅に着くと
茜が心配そうな顔をして出てきて
「紬さんは?」
と、訊ねる茜の横を通り過ぎて
俺は、リビングに向かう。
母親は、茜と何か話していたが。
茜が料理を作っていたようで
母親は食べていたが
俺は、食べる気にならず
ビールを飲んだ。
葵は、寝たようだ。
三人は、黙ったまま······
翌日、会社へ電話がかかってきた。
それは、結月ちゃんのご主人である
高橋 健太さん。
弁護士だ。
「内容は、お分かりだと思いますが
明日の夕方、私の事務所へ
お見えになって下さい。
太田 里子さん
佐川 茜さんも一緒に。
宜しくお願いします。」
と、言って切ろうとする高橋さんに
「あっ、あの、紬は?
大丈夫なんでしょうか?」
「紬さんの意識は
戻られていません。」
と、言うと高橋さんは、
「それでは。」
と、言って電話を切った。
俺は、少し席を外して
母親に電話をして
今の事を伝えて
茜にも知らせて欲しいと言った。
紬と再会してから
結婚するまで
結婚してからの
二人の生活を思い出し
もう、あの幸せな日々はない。
俺が·····俺が······っ
壊した·····んだっ·······
トイレの個室に入り
頭を垂れるとともに涙が流れる。
会社で涙を流すなんて
と、思うが中々止まらずに
しばらく動けなかった。