もう⋅⋅解放⋅⋅して⋅⋅⋅下さい
三日後に旭は、
本社に呼ばれた。
本社に着くと
研究部門部長と総務部長と
高橋弁護士がいた。
旭は、その時部長二人から
離婚届に署名をするように
説得された。
高橋弁護士は、
その様子を黙ったまま
見ていたが······
上司の説得にも関わらず
旭は、黙ったまま
下を向いていた。
「太田さん。
あなたは自分自身で
佐川さんと不倫をしたのです。
たかが、一度であっても
貴方を信頼し愛してきた
紬さんに対して
大きな裏切りなんですよ。
あなたは自分の気持ちを
貫く資格はありません。
あなたが、紬さんに
いま、出来る事があるならば
それは、一日も早く紬さんを
あなたから、太田家から
解放する、それだけです。
紬さんは、現実が嫌で
逃避の為に自分の中に
閉じこもっといるのではないか
と、病院の先生は
仰っています。
もう、紬さんを解放して
あげてください。
紬さんには、幸せになる
権利があるのですよ。
あなたの身勝手に
振り回してよいわけない。
子供の事を言われて辛い思いを
していたかもしれません。
だけど、それに負けては
駄目だったのではありまか?
紬さんは、もっと辛い思いを
していたのですから。
あなたは、快楽に負けたのです。
あなたは、あなた自身も子供が
欲しかったのですよ。」
と、言われ
紬も倒れる前
悲しく、辛い顔をしながら
もう、解放して下さい。
と、言っていた。
涙が膝の上の拳にいくつも
落ちる中······
俺は、やっと·····
部長からペンを持たされ
離婚届に記入した。
高橋弁護士は、
部長方に
「お仕事中、本当に
申し訳ありません。」
と、頭を下げ
「どうか、太田さんも
幸せになって下さい。」
と、俺にも頭を下げて会議室を
後にした。
俺は、総務部長から
「こんな風になっているとは
思っていなかった。
君は、会社に研究部門に
必要不可欠な人材では
あるが。
一人の女性を傷つけた責任を
取らないと行けない。
後の事は、人事と役員と
決めます。
今日は、このまま帰宅しなさい。」
と、言われた。
研究部門部長は、
俺の肩を一度叩いてから
会議室を後にした。
俺は、重い腰をあげて
本社を後にした。
このまま、命を絶とうか
とも思った······
だが、そうすれば
また、紬を傷つける事になる
それだけは、避けたい。
ああ、生きても苦しみ
いなくなることも
できない。