もう⋅⋅解放⋅⋅して⋅⋅⋅下さい
❖❖帰宅
< ガチャン >
と、ドアが開き、閉じる音が·····
玄関に走ると
キャリアケースを引いた紬が
びっくりした顔をして俺を見て
【あれ?伊織いたの?】
と、言いながら
靴を脱いで上がり
俺の横を通り過ぎる
紬は、靴のまま家の中に入る
事を嫌がり
我が家は、靴を脱ぐやり方を
行なっている。
呆然としていたが
慌てて紬の後を追うと
紬は、キャリアケースを開き
片付けをしていた。
【紬、どこに行っていたの?】
【あっ、伊織、ただいま。
ドイツに行っていたの。
ずっと、行きたかったから
ゆっくり、回れて
とっても、楽しかった。】
【ドイツ?なら、俺も。】
【あら?あなたが一緒に行くとは
思えなかったし。
あなたは、自分の事で
いっぱい、いっぱいだったし
私を必要としていないの
わかったから
なら、一人で好きな様に、とね。】
と、言われて
【ごめん。そんなつもりじゃ
なかったんだ。】
【ううん。いいの。
伊織を責めているわけじゃないの。
私も子育ても終わり
少し自由にさせてもらおうかな
と、思っただけ。】
話の途中で紬に被せて言われて
しまい、紬は話しながらも
手を動かし片付けていた。
俺は、それを黙ったまま見ていた。
キャリアケースの中身を片付けて
洗濯をしたり、掃除をする紬を
じっと見て買い物に行こうとする
紬に、一緒に行くと言うと
【伊織は、ゆっくりして。】
と、言われて
紬は、靴を履き玄関から出て行った。
取り残されて
俺は、またソファーにドサリと
座った。
何をやってるんだ。
俺は·······
紬が帰って来て食事の準備をしている
【手伝うよ。】
と、言うがまた、
【ゆっくりして】
と、言われた。
食事が終わり
片付けは、俺がやり
珈琲を入れて
紬の前に置き
自分もソファーに腰掛ける
【ありがとう。】
と、言いながら珈琲を口に運ぶ紬に
【毎日、料理作ってくれていたのに
食べなくてごめん。
帰って来た日は、
食べさせてもらった。
おいしかった、ありがとう。】
と、言うと紬は、びっくりした顔を
しながら首を横に振る。
【琴葉の事で、紬に
私達の子供だから大丈夫。
琴葉を信じてあげようと
言われて
母親って、そうなんだろうか?
心配じゃないのか?
と、思ってしまい。
イライラしたのとショックだったのと
琴葉に親離れされてぽっかり穴が
空いたようになり
それを仕事にぶつけてしまった。
家族を··紬を···大事に大切にすると
生きてきたのに。
何をやってるんだ、と。
帰って来て紬がどこにもいなくて
亜希翔に連絡したら
親父が琴葉以外の事を気にかける
はずがないから琴葉の事なら
連絡をとってないから
わからないと、言われたんだ。
子供の亜希翔にまで
そんな風に言われる位に
琴葉以外に関心がないと
思われる態度を、行いを
していたのかと。
本当にすまない。】
と、頭を下げながら
紬のパスポートがなくて
母親に連絡して母親に叱られた事
高橋に連絡したが連絡が取れない事
健太に連絡して健太さんに
言われた事を話した。
【だから、お義母さんから
連絡あったんだ。
ゆっくりしなさいとね
よくわからなかったけど
ありがとうございます。
と、言ったら
良かった、と仰っていたの。】
と、嬉しそうに紬は言った。