灼けるような恋の先。
逃避
結婚しようと言った日から数週間。
ここら辺の治安の悪化が激しくなって、樹は休みなく働いていた。
そのせいで役所に行くどころか二人の時間すらほぼなく過ぎていたのだ。
「あーくそイライラしたわ〜〜やっと休みだぞ!ブラック企業かよ」
「おつかれ。治安はだいぶん落ち着いたのか?」
「あーーいやぁまぁまぁ、変や客多いし喧嘩しに来るやつも嬢に乱暴するやつも多くてまじだりー」
「クラブの見回りでもなんかチンピラみたいなやつら結構いたな。
女の子に声掛けて断られたら小競り合いが起こるとか結構あった。」
「だろー?菫も気をつけろよ。
一応タトゥー見えるようにしとけ、そしたら余程の事じゃねぇと俺の女に手出すやつはいねぇから」
「うん」
樹なりの優しさに頷く私。
毎日暴力ごとにも駆り出されて怪我をしていたのに、血が苦手な私の前では絶対に血の着いた状態を見せないだとか。
そんな優しさも持っている樹。
「ほら!今日はせっかくの休みだからな!役所行くぞ!」
「ようやくだな」
「おう!もう準備はバッチリだぞ」
私の腕を引きながらタバコに火をつけて私の口に突っ込んで、その後自分のタバコを吹かす。
「あ、指輪も買わねーとだな?」
2人並んで歩きながら役所までのそこそこな道のりでそう声を上げる樹に私は首を振る。