灼けるような恋の先。
幸せな夢を見ていた。
灯と私と暮らしていて、時々晄が遊びに来る。
そして可愛い子供もいるんだ。
手を伸ばせばそこには灯がいて、すぐに握ってくれる手。
ずっとここにいたい。
そう思っていたのに、夢は無情にも覚めてしまった。
「ん…?」
幸せな夢から覚めた私は見知った場所、クラブの休憩室で目を覚ました。
目を開けると隣には樹が座っていて起き上がると目が合う。
「お前の過去に突っ込むつもりはねーけど、彼氏の前で別の男の名前呼ぶのは違うだろ」
樹はどんな感情なのかいまいち分からない顔と声でそう言うから私もどうしていいか分からない。
「菫がトモルトモル言うから、死んだ相手を殺したくなるほど憎いよ俺は」
「…悪い」
「あんな胡散臭い占い師の言うことなんて信じるなよ」
「わかってる」
全部を信じてるわけじゃないけど、思い出したらああなってしまうから嫌なんだ。
そんなに寝てる間に灯を呼んでいたのかは分からないけど、樹の不機嫌な顔を見ると相当言ってたんだろう。
ただ今は独りじゃないと実感したい。
「樹、ごめんな」
私は謝りながら樹に抱きつくと、樹はきつく抱きしめ返してきた。
「なんだ?菫から抱きついたり甘えたりって初めてじゃね?」
「んー、私を1人にするなよ」
「おう、しねぇよ」
力強い言葉に私はこの人と生きていくんだな、と今更ながら覚悟を決めた。