灼けるような恋の先。




樹か出てから程なくして聞いたことのある声が響いてきた。






「菫趣味わりー!!!!!」






と、その後ガシャンと音が聞こえてきて、音的に店の方じゃなくて裏の方だろうか…。






「ちょっ、私行ってくる」



「え!?菫さん!?」






聞いたことのある声に放っておけなくなった私は頭より先に体が動いていて、止めるハルくんを振り払って声のした方に走る。




急いで声のした方に駆け寄ると、やっぱりそこには見知った人物が樹と向き合っていたのだ。






「だーかーら、俺はお前に用ねーの!菫出せって!ここにいるのは知ってんだからなー!」



「だから、菫は俺の女でお前に見せる意味もねぇだろ!」



「意味があるかどうかは俺が決める!俺は菫に会いに来たんだっつーの!」






永遠とそんな言い合いを繰り広げていて、私は思わずため息が出る。



ほんと、変わってないみたいだなあいつは。






「なにやってんだよ、バカ晄」






大人っぽい見た目にはなったものの言動とかは変わってない5年ぶりの晄に笑って話しかけると


晄も樹もびっくりしたように私を見た。






「菫!!」



「なんで出てきたんだ!」



「場違いなバカの声が聞こえたからつい、な」






私の言葉にニッと笑う晄と、不機嫌な樹。



旧友の登場になんで来たんだって気持ちと共に懐かしさもあって変な気持ち。






「菫が急に退学して姿消して俺めっちゃ探したんだぞ!!
お前の親も灯の親も俺の親も心配してたのに突然大丈夫だから探すなって手紙だけ来て、俺らどうしていいかわかんなかったんだからな!」



「そんなこともあったな」



「呑気かよ!どこ探してもいなくて、そしたらこの前燈ちゃんから口止めされてたけど、ここにいたって聞いたんだよ!!」






やっぱ言っちゃったか。


燈ちゃんなら言わないかと思ったけど晄が困ってたら手を貸してしまうタイプだもんな。



私達のやり取りを見てイラついた顔の樹は私の肩に腕を回す。






「俺たちこれから婚姻届出し行くから思い出話やめてくんね?邪魔。
てか俺らのテリトリーに過去の人間が入ってくんじゃねーよ」



「はぁ!?婚姻届!?
お前灯は!!」



「灯は死んだだろ。」






言わせるなよ。


私だって本当は灯としたかったに決まってんだろ。






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