灼けるような恋の先。
今なんの仕事をしてるのか、何をしてるのかは知らないけど
見た目から明らかにこんな世界と関わるような人生では無い晄の胸をとんと押す。
「帰りな。ここは晄みたいなバカの来る場所じゃないよ」
「お前もだろ!なんでこんな治安悪いとこに…!」
「私には私の居場所があるんだ。
もう晄には関係ないだろ」
懐かしい人だけど、こちら側に来る人じゃない。
私が突き放して燈ちゃんの時と同じように帰るよう促すも晄は嫌だと首を振った。
「晄、私達はもう仲のいい友人じゃない。
昔友達だった人だよ」
「なんだよそれ!ふざけんな!
俺はまだあの家でお前らの荷物も家具も全部そのままだぞ!!」
「荷物捨てていいから」
「トモくんもスミちゃんもヒカくんもまだ元気だぞ!!俺ずっと育ててんだぞ!!」
「そりゃ、あれはあんたが取ってきた金魚だから当たり前だろ」
まだあの3匹は元気なのか。
私達はバラバラになったのに3匹はいつまでも一緒だといいな。なんて。
私が晄に背を向けて樹の手を取って歩き出すと、晄は悔しそうに壁を殴る音が聞こえてくる。
「逃げんなよ!菫はその男といて幸せなのかよ!!灯に抱いたような気持ちはあるのかよ!!俺はお前らをすぐ近くで見てたけど、そんな顔じゃなかったろ菫!!」
晄の悲痛な声に私は手をにぎりしめる。
幸せか、なんてわかんないよ。
灯に抱いた感情なんてもう二度ときっとないもん。