灼けるような恋の先。
「悪かった。俺はただ菫にどれだけ好きかわかって欲しくて」
樹は私を潰れそうなほど強く抱き締めて謝った。
それでも私の目からはポロポロと涙がこぼれ落ちる。
「俺は菫のこと狂ってしまうほど好きなんだよ。
その綺麗な顔も、綺麗な声も、スタイルも、クールな性格なのにどこか消えてしまいそうなとこも、優しくてこんな俺を見放さないとこも、上げたらキリないくらい全部好きなんだ」
「うん」
「だから菫が俺を好きな気持ちに差がありすぎておかしくなりそうだ。
菫は独りにしないでって言ったけど、俺はいつも独りな気分だぞ」
絞り出すような切ない樹の言葉にそんな思いをさせていたのか、と更に苦しくなった。
過去のことも深入りしない、灯以上に好きな人なんてできない。
その条件でもいいと言ってくれたけど、そんなに思ってくれていたらそうなのかもしれないな。
自分一人だけ好きなのではって気持ちは辛いだろう。
「ごめん、樹のことちゃんと好きだよ。
灼けるほどこの人だってほどでは無いかもしれない。
でも、ちゃんと好きだよ。」
樹の頬に手を添えて、ちゃんと目を見て伝えると樹は泣き出しそうな顔になる。
「私達このまま結婚するのはよくないと思う。
ちゃんとお互いについて教え合わない?」
相手が分からないのはよく知らないから。
5年も一緒にいるけど、それ以前のことを全く知らないから。
そんな私の提案に樹も静かに頷いて、私の体にバスタオルを掛けて抱きしめた。