灼けるような恋の先。
5章
向き合う
樹と私が話し合ってから1週間。
私は覚悟を決めて3人で住んでいたマンションにやってきたのだが。
「相変わらずダサいな…」
私たちの部屋のベランダに、あの時のお揃いのパーカーが3つ干されているのが見えて思わず笑ってしまう。
少し緊張しながらインターホンを鳴らすと、中からバタバタと音を立てて驚いたような喜んでいるような顔の晄が出てきた。
「お、おかえり菫!」
「ただいま」
ただいまでいいのか迷いつつただいまという私を笑う晄。
「今日はどうした?」
家の中に入ってリビングでコーヒーを出してくれる晄は私にそう問いかけてきた。
全く家具などの配置も変わってない部屋に胸が苦しい。
「ちゃんと、向き合おうと思って」
本当は怖い。
今すぐ部屋からどうしたの?って灯が出てきてくれそうなんて期待すらある。
そんな私の決心を晄は昔はしなかった優しくて暖かい灯みたいな顔で笑って頷いてくれた。
5年、私にとっても晄にとっても変わるには十分な時間だったんだろうな。
「とりあえず墓参り行くか!」
「うん」
墓参り。
そこにいったら灯がもうこの世に居ない事実を受け入れなきゃ行けないようで怖くて本当は行きたくない。
そんな私の手を晄は優しく握って引っ張って歩き出したのだった。