灼けるような恋の先。
晄の手はこんなに暖かくて優しかったっけ?
そんなことを思いながら晄と手を繋いだまま灯の眠るお墓へとやってきた。
のだが…。
「無理、やっぱりダメだ」
《卯月家之墓》と書かれたお墓が目に入った瞬間私は動けなくなってしまった。
近づくことも出来ない。
やっぱり、無理だ。
「菫、灯待ってるぞ?」
「灯はそこにはいない、灯はまだどこかにいる…」
灯が死んだなんて嘘だ。
私の頭の中はそれでいっぱいになって、しゃがみこんでしまう。
そんな私の背中を晄はトントンと優しく叩いてくれる。
「俺も、灯が死んでから寝れなくなったし先端恐怖症になってナイフみたいなの見たら吐き気がする。
でも灯には二度と会えないけど、ここに来れば灯はここに眠ってんだって思ったら少しだけ気が楽になった」
近しい人を目の前で殺された私達の心の傷、精神的苦痛は当事者同士でも計り知れない。
私の苦痛と晄の苦痛は違うし症状も違う。
だけど一つ言えることは一生癒えない傷を背負ったってこと。
そんな同じ境遇の晄が言うと説得力はある。
あるけどそれを受け入れるには私はやっぱりむりなんだよ。
「菫もいなくなって世界で俺だけ取り残されたかと思った。
家にいるのが辛くて引っ越そうとしたけど、俺が引っ越したらあの家にいた灯と菫と俺の形跡は?無くなるかもって思ったら嫌で引っ越せなかった。」