灼けるような恋の先。




【菫side】



灯のお墓は辛く苦しくて呼吸がしにくくて手足が震えて怖くてたまらなかった。



なのに突然晄が告白なんてしてくるから少しだけ気持ちが紛れて、少し感謝。




やっぱり晄は頼れる男になったんだな…。なんて。






「さ、灯の部屋片付けするか!」






あの後家に戻って、灯の部屋を片付ける遺品整理をしようと晄は扉に手をかけたけど思わず私は止めてしまった。






「今度にしよう。
やっぱり部屋は無理ほんとに無理ごめん」






灯と一緒に過ごした部屋、灯の匂いのする部屋。


クリスマスパーティーが終わって一緒に抱き合って肌を重ねて寝た部屋。



全てが走馬灯のようによぎってきて私は動けなくなった。






「そんなに無理?」



「無理。灯の懐かしい匂いとかするもんもう。部屋の前だけで。もう無理。」






人間匂いは残るから、匂いで全てを思い出すんだ。



灯の優しい話し方、低いけど心地のいい声。
少し怖い顔なのに表情は穏やかなとこ。

同じ柔軟剤なのに何故か3人とも違う匂いの灯の香り。


クシャッと笑う顔。


死の間際でも私のことを思ってくれたとこ。




全部全部昨日の事のように思い出して頭がぼんやりしてくる。






「はぁ…はぁ…」



「菫、無理はしないでいい。ゆっくり息吸って!」



「はぁ、はぁ…」






思い出して発作が起きる私を抱きしめてとんとんと背中を叩く晄だけど

私はそのまま意識を手放した。



こんなに暖かくて灯のいない現実世界で生きていきたくないよもう。






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