灼けるような恋の先。
妊娠検査薬で陽性を見てから数日。
あの後病院に行ったら本当に妊娠していて、そこで私は本当に妊娠してるんだという実感をした。
「菫さん体調悪そうですけど大丈夫っすか?」
いつの如くクラブでの仕事中、ハルくんはそう聞いてきた。
ハルくんとはよく仕事も一緒になるから一応妊娠したことを告げている。
他の人には樹へ恨みがある人とかが何するか分からないからバレるまでは言わないってことになってるけど。
「大丈夫、少し気持ち悪いだけ」
「無理しないでくださいね!」
「ありがと」
優しいハルくんは本当になんでこんなとこで働いてるんだろうと思わずにはいられないよ。
「菫さん幸せですか?
樹が親する姿なんて想像つかないっすよね」
「はは、確かに。
樹が変わってくれないと本当に…ね」
「そうっすね…。
まぁ何があっても俺も晄さんも守るんで!頼ってください!」
ピュアな瞳でそう言ってくれるハルくんの頭を撫でる私。
【樹の彼女】の私には普通の人は近寄ってこないし、近寄ってくるのは樹をどうにかしたい人だとかそんな変な人ばかり。
だからこうして純粋に慕ってくれるハルくんが本当は嬉しくてたまらないんだよね。
「あ、樹さん来ました」
ちらりと入口を見てそう言うとお喋りをやめてキリッと顔を整えるハルくん。
やってきた樹の顔は険しかった。