灼けるような恋の先。
俺の着ていた長袖パーカーを着せて、フードを被せて何も話さないし俺の言う通りしか着いてこない菫を連れて帰ってきて
リビングに座ったまま動かない菫にコーヒーを渡す。
「菫、飲みな?」
「……うん」
渡したコーヒーに口をつけながら、菫は何を考えているのか分からない顔を崩さない。
こんなに元気の無い菫は初めて見る。
灯を亡くした時でも頑張って普通に振舞っていたのに。
「あ!これ!ほら、ちゃんと持ってきたから大事にしろよー?」
何とか普通になって欲しくて、唯一持ってきた灯の指輪と時計を渡すと
それは大事そうに胸元に抱き抱える菫。
どんな時でも灯だけはきっと特別なんだろうな。
「灯の事忘れようとした。
樹に支配されるようになった一年前に灯のことは封印しよう忘れようって」
「え?」
唐突にそう話し始めた菫に耳を傾ける俺。
「忘れれるわけないのにな…。
こんな中途半端な気持ちだから樹のことも狂わせたんだ。
私がいなきゃ良かったんだよな…」
消え入りそうな声でそう言う菫の肩をそっと抱いた。
その肩は震えていて、灯に戻ってきて欲しい、そう強く願わずにはいられない。