灼けるような恋の先。
突拍子もない樹の提案に私は戸惑うも
私が灯と生涯共にしたかったのと同じ気持ちなんだって思うと無下にすることなんて出来なかった。
「俺の事、嫌いじゃねぇんだろ?」
「うん、ちゃんと好きだよ。恋愛として。
でも私達はお互いをダメにする。
樹は私に執着して暴力的になるし、私は樹といると自分を大事にしなくなる。
だから、別れるの」
お互いに大事に出来ないから。
私は私を大事にしないとダメだってことを思い出したから。
そんな私に泣きそうな顔の樹は項垂れたまま。
「好きなら半年間結婚してくれ。普通の恋人だった頃みたいに暮らそう…。
俺は菫がどうしても欲しくて離したくねぇ。だからせめて初めてをくれ。そしたら俺頑張るから…お前なしでも生きていくから…」
苦しそうに顔をゆがめて、いつから持っていたのか折れ曲がった婚姻届を差し出してくる。
これが正しいなんて思わない。
でも、これで少しでも樹の気が晴れるなら私も私を差し出すよ。
「わかった。半年間の約束な」
「おう…ありがとう…」
渡された婚姻届に名前を書いて答える私に樹はお礼を言って私を抱きしめた。
その腕が強くて、でも縋るようで私の胸は苦しくてたまらない。
「愛してる、菫」
樹の切ない言葉にごめんと心の中で謝って、優しく服を脱がせる樹を受け入れた。
触れる度、肌が重なる度、私はちゃんと樹を好きなんだと感じてまた苦しくなった。
でもこれが私の出した答えだから、もう迷わない。