灼けるような恋の先。




「あ、中学の卒業式の動画じゃん」






案外と穏やかな気持ちでスマホの中を見たり洋服を整理していると、晄はそう言ってスマホを私にみせてきた。



そこには後輩や同級生にボタンを取られた学ランが前開きの灯と、ぶすくれた晄が映っていて、私が撮ったものだとわかる。






『なんで俺より灯がモテんだよー!』



『そういう所じゃないか?』



『はぁ!?ぜってー俺のがいい男じゃん』



『はは、そうだね、俺も俺をいい男だなんて思わないから晄の方がいい男なのかもね?』



『バカにしてんだろ』



『あはは!バレた?』



『バレバレ〜』



『イチャつくなお前ら』



『『イチャついてないだろ!?』』



『はは、うける』






昨日のことかのように思い出せる映像の私たちは楽しそうで、懐かしい。






「菫、これは俺が撮ってやったお前らのラブラブ動画〜!
ほとんど動画は灯のフォルダに入ってんじゃん」



「容量ないからーって灯ので撮ってたもんな〜」






そんなことを言いながら動画を流す晄。



学校の教室で他愛ない会話をしてる時の。






『今度このお店行ってみたいんだけどデートでどう?』



『いいじゃん、私あんまりこういうオシャレなお店行ったことないわ』



『お、いいね、このお店の雰囲気菫似合ってるから好きだなって』



『え〜っ、つまり私が好きだって??』



『それはもちろん』



『はは!私も好き〜なんつって』



『なんつってってことはほんとは?』



『好きに決まってんじゃん言わせるなよバカ』



『あ〜可愛いなぁ菫は可愛いねぇ〜』



『おばあちゃんみたいだな』



『イチャつくなよお前ら!俺いんだぞ!』



『とか言って撮ってんの晄じゃん』






はははっと笑い声の後に終わる動画に思わず私も笑ってしまった。






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