灼けるような恋の先。
「あはは!これみたら私たちバカップルじゃん!」
「だろ!?俺からはいつもそー見えてたけどな?!」
「はは!うける」
こうして灯との思い出を振り返ると辛かったことなんてひとつも出てこなくてただ楽しい。
私は本当に逃げて傷ついた振りをしてただけだったんだな。
「菫のそんな顔初めて見た」
私と晄が笑っていると、樹は私を見た事ないくらい優しい顔で見てそう呟いた。
「もともと菫はこんなやつだぞ?
クールででも優しくて、意外と笑ったりのったりしてくれんだ。
でも、お前の知ってる菫も本当の菫だから俺はそっちを知らないし、知らない顔があって当たり前だろ!」
晄は樹にそう言って笑いかけて、樹もキョトンと何か考えた後に憑き物が落ちたような顔をする。
「俺は間違えてたな…。
俺はこの灯ってやつみたいに菫にこんなに幸せそうな顔させてやれなかった」
「樹…」
「好きだったんだな心から、灯ってやつのこと」
「うん、すごく好きだった」
私の言葉に笑い返して手を握ってきた樹は、出会った時みたいな優しさを感じる。
私は樹なら求められても嬉しいかも、そう思ったから付き合ったんだったね。
「服とか着れそうなのは貰っていいって親御さん言ってたから俺もーらおっ」
「いいじゃん、生きてた時だって勝手に借りてきてたでしょ晄」
「そうそう、菫だって着てたじゃん」
「まぁね」
洋服を畳んでダンボールに直して、着れそうなのは貰って。
そんな仕分けをずーっとやったのだった。