灼けるような恋の先。
翌日
持てるものは持って、私と晄、それに樹は灯の実家へとやってきた。
初の仏壇参りも兼ねて。
「いらっしゃい、菫ちゃん晄くんと菫ちゃんの彼氏さんかな?」
「あ、まぁそうです」
「よかった、灯を引き摺って貴重な菫ちゃんの時間奪ってないかなって思ってたんだ」
「いえいえ、引き摺ってはいますけどそれなりに前向いてます」
灯の母親とそんな会話を交わして仏壇のある部屋へと通してもらう。
仏壇に備えられた遺影はにこやかに、優しく笑う灯らしい灯で苦しいけど優しい気持ちになった。
「灯〜、やっと菫来てくれたぞ!」
「私ね、遺品整理して少しだけ心の整理も着いたよ。
ずっと辛いと思ってたけど、思い出の中の灯は辛いことなんてなかった。
楽しくて穏やかで優しい思い出ばかりだから、私はこれからは灯を穏やかに思い出せるよ。
沢山時間かかって来るの遅くなってごめん」
仏壇に手を合わせて私は帰ってこない返事を待つように一息ついて、顔を上げる。
大丈夫。
もう手の震えもない。
「菫ちゃん、灯と付き合ってくれてありがとう。
晄くんも、灯にたくさん楽しい思い出をありがとう。」
灯母はそう言って灯にそっくりな笑顔で笑った。
「あの子、実家に来たら菫晄菫晄って2人の話ばっかりだったの。
だからシェアハウスさせてあげてよかったなってずっと思ってたよ。
菫ちゃん、菫はこれから先灯の分も楽しく充実した毎日を送ってね?
それで時々思い出してくれたら嬉しいな」
「はい、私も灯と付き合えて本当に幸せ者でした。
これからはしっかり自分を見失わないように生きます」