灼けるような恋の先。
喪失感
翌朝
チェックイン前に目覚めると隣で寝ていたはずの樹が居なかった。
「樹…?」
服を着て、トイレやお風呂も見たけど居ない。
変に思いつつも、外に出てるのかと電話をかけると
『おかげになった番号は現在使われておりません』
と、機械音だけが聞こえてきた。
「え…?」
訳の分からない私は部屋を見て回って、ふと机の上に便箋が置いてあるのに気がつく。
「手紙…」
『菫へ』と相変わらず綺麗な字で書かれた文字に樹体と瞬時にわかった私は急いで手紙を開けた。
『菫へ
突然ごめんなさい。
菫と楽しい思い出を俺は沢山作れて、菫から嬉しい気持ちを貰って、幸せです。
沢山心も体も傷つけてごめんなさい。
そんな俺を愛してると言ってくれてありがとう。
これ以上菫と過ごすと別れるのが嫌でまた駄々を捏ねてしまいそうだから俺はこの思い出を最後に菫の前から消えます。
勝手にごめんなさい。
クラブもハルにあとは任せることにしたし、俺たちの住んでいた家も今週末で契約終わりにしました。
なので俺も逃げずに自分の家と向き合って、親の会社のことについてちゃんと考えてみることにします。
こう思わせてくれたのも菫が辛そうながらも楽しそうに、ちゃんと過去を乗り越えるのをこの目で見たからです。ありがとう。
実は、婚姻届も提出したって言ったけどしてないんだ。だから返しておきます。
こんな俺を見捨てず付き合ってくれた菫はきっと俺は永遠に大好きで愛してます。
いつか立派になって菫に恥ずかしくない俺になるように頑張る。
だからその時はまた会えたら嬉しい。それは運命に任せることにするよ。
きっとこれから菫は優しくて素敵な人と出会って付き合って結婚するかもしれない。
その時は絶対に今度こそ幸せになってください。
俺はずっとずっとそれを祈ってます。
長くなったけど、俺は菫のことが大好き。それだけだよ。
今まで本当にありがとう。
樹より』
手紙には、そんな内容が書かれてて
便箋には折りたたんである婚姻届が入っていた。