灼けるような恋の先。
トイレを済ませて外に出ると、花火前だからか人もまばらになってきていた。
「早く戻らないとだな」
3人で花火は毎年のことだから間に合わなくちゃと呟いて足を踏み出した瞬間
後ろから口を押えられた。
「っ!」
突然のことに驚き、声を出す前に次は首元にひんやりと冷たいナイフを当てられて私は動くことも出来ない。
口元を押えられたてはゴツゴツとしていて厚く、男の人のものだと言うのはすぐに分かる。
こういう時どうしたらいいんだろう。
「何も言わずに付いて来い。逃げようとしたら殺す」
戸惑う私の耳元で低い声で紡がれたその言葉にどうすることも出来ず頷いた。
それと同時に降ろされるナイフと手。
「来い」
マスクにサングラスに帽子の男の顔はわからず、でも聞いたことすらな声で見ず知らずの人なんだろうことは察した。
どうしてこんなことになったんだろう。
こんな時の対処法なんて知らない私は腕を引っ張られるままその男について行くしか無かった。
灯、晄が助けてくれたりすることをかすかに信じつつ。