灼けるような恋の先。
誰か助けてくれ。
私の心の声なんて伝わらずニコニコと笑いながら楓ちゃんは包丁を振り上げた。
「菫、退けな!」
灯の声とともに灯の手に引っ張られた私は灯の横に倒れて菫ちゃんから逃げ切る。
「よく聞いて菫、警察が来たらしっかりこのこと話すんだよ?
晄もちゃんと救急車乗せるように言うんだよ」
「灯の方が先に決まってんじゃん!」
「そう言いたいけど、どうかな…」
「は!?」
嫌だ嫌だ嫌だ。
そんな声を出さないように灯の手を引っ張ると楓ちゃんは容赦なく灯の背中に更に包丁を突き立てる。
「灯くんが1番邪魔だもんね」
「やめなさいよ!!ふざけるなよ!!」
何度も何度も刺そうとする楓ちゃんに体当たりして今度は私が灯を庇うように覆いかぶさった。
灯は私が守らなきゃ。
「すみ、れ」
「灯お願いしっかりして」
背中を数カ所刺された灯は苦しそうに顔をゆがめて無理やり動くと私を抱きしめる。
「ねぇ、見て見て私の事」
後ろからそんな声が聞こえるけど無視して灯を抱きしめていると灯からひゅっと息を飲む音が聞こえてきた。
「全く見てくれないんだね、そこの彼氏が死ぬのも、仲のいい友達が死ぬのも、菫ちゃんを好きな人間が死ぬのも全部菫ちゃんのせいだよ?
きっと今後ろくな生き方出来ないよ、私からのクリスマスプレゼント!一生モノだね!じゃあね」
低く落ち着いた声で楓ちゃんがそういった後、鈍い音がして倒れる音がする。
灯はそれと同時にピクリと手が動いた。