死にたがり屋は恋に堕ちる
 不安になっていると、兄貴の部屋から死神が平然と出てくる。

「死神……!」
「よっ、看病してくれたおかげで回復したぜ。ありがとうな」

 いた。よかった。本当によかった。……って、何で私、こんなにホッとしてるの?
 私の表情を見て、死神がニヤッと笑う。

「ははーん。いなくなったと思って安心してただろ。残念だったな、お前を地獄に連れて行くまで部屋に居座るからな。覚悟しとけよ」

 私、おかしい……死神に居座られるのが嬉しいなんて。

「何で、死神なのよ」

 死神が人間なら最高なのに。

「どーした、部屋の前で突っ立って」

 兄貴が部屋から出てきて、不思議そうに私だけを見る。

「な、何でもない!」

 やっぱり兄貴にも死神の姿は見えてない、私にだけ見えるんだ。ちょっと特別な気分かも。



「楓さぁ、前より明るくなったね。何かあった?」

 終礼の後、モカは嬉しそうに私に話しかけてきた。
 モカに恋人が出来てからほとんど笑うことがなくなっていた私だったが、そういえば今日は自然に笑えていた気がすると思い、ぎこちなく頷く。

「そうかも。ちょっとだけ良いことあったから」
「なになに? 良いことって」
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