死にたがり屋は恋に堕ちる
「ああそう、私も死神なんか興味ないのよ! 生きるか地獄に行くかの選択肢しかないなら、そろそろ出て行ってくれる?」
 無理矢理部屋から追い出そうとすると――死神がしんどそうに倒れた。


******

 引き出しを開け、ぎゅうぎゅうに詰め込まれているコスメや香水を粗野な仕草でどけると、奥の方で体温計が顔を覗かせた。
 死神の体温を計ると三十九度で、私は目を瞬かせる。

「どうしてこんな高熱なの?」
「俺はもう長くないんだ……。以前死神のルールを破っちまって、もうじき罰を受けることになってる……」

 死神が掠れた声で言った。

「ルールを破ったって、まさか人間の寿命を延ばしたとか……?」
「……そんなところだ」
「……」

 寿命を延ばすってことは、その人間のことが好きだったんだろうな。死神でも人間に恋するのね。その人間ってまさか、あの曲を教えてくれた人なのかなぁ。 

「自業自得だ。放っておいてくれ」
「放っておけるわけないでしょ!」
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