死にたがり屋は恋に堕ちる
 私が助けなきゃ死んじゃうかもしれない。死んで欲しくない、私を地獄へ連れて行こうとする嫌な奴だけど、ピアノであんなに綺麗な音色を奏でられるし、人間に恋する優しい心を持ってる奴だもの。

 でも、死神について何も知らない私に看病できるの? ……いや、やるしかない、だって この死神が見えるのは私しかいないんだから!

「死神、寒気はない?」 
「すげぇ寒い……」

 毛布を持ってきて体を包むが、まだかなり寒いようで震えている。九月になったばかりでまだ暑い時期だが、暖房をつけ高温に設定する。幸い私の家は新築でエアコンも最新型で、加湿機能がついている。
 寒さ対策はこれで大丈夫かな。よし、次は食事だ。

「死神って何食べるの?」
「……」

 返事がない。私が用意した布団に横になって眠っているようだ。
 人間が食べるものを食べれるのかわかんないけど、試しに作ってみよう。
 私が台所で料理する様子を、父も母も兄貴も、不思議そうに見ていた。

「死神ー、おーきーてー。お粥作ってみたんだけど、食べれる?」

 ゆっくりと目を開ける死神のまえに、土鍋に入ったお粥を差し出す。

「……お前が作ったの?」
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