死にたがり屋は恋に堕ちる
「うん。食べれない?」

 熱い湯気が立ち上るお粥をまじまじと見る死神。

「いや、食える……」

 死神は口に運ぶとゆっくりと咀嚼し、飲み込んだ。

「美味い……。今まで食べたお粥の中で一番」
「やめてよ、お世辞なんて」
「本当だよ。ガキのくせに気が利くんだな……。お前自分が気付いてないだけで、本当はモテるだろ……」

 そう呟きながら死神はまた眠ってしまった。
 モテるだろ……なんて、人生で初めて言われたよ。照れるじゃない。だめだ、私を地獄へ連れて行こうとする死神なのに――胸がキュンとする。

 死神の寝顔があまりにも儚げで、このまま永遠の眠りについたらどうしようと心配になって、私は傍から離れられなかった。


 自分のベッドの上で目覚めると、窓からは朝日が差し込み、小鳥のさえずりが聞こえていた。いつもと変わらない、穏やかな朝だ。

 しかしここまで辿り着いた記憶はない。死神が私を運んでくれたのだろうか。
 高温に設定していたエアコンは消されていて、死神の姿はなかった。

 まさか、死神は消滅してしまったの? 看病のやり方がダメだった? 私、取り返しのつかないことしちゃった、どうしよう――。
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