ボロ姫と王子様

ギィィーっと不気味な音を立てながら
大きな門を押して中に入った。


玄関までは少し距離があって
歩いていると近づくにつれ
紙が貼ってある事に気づいた。


《差し押さえ》


「え?」


どういう事?
差し押さえってあの差し押さえよね?


今朝まで普通の我が家が
差し押さえの紙が貼ってあり
家の中に入る事さえ許されなかった。


どういう事?


すぐに鞄から携帯を取り出し
父親に電話をかけた


プルルル
プルルルルルー


『ーー蘭か。』


「お父さん、家に入れないの。
それに差し押さえってー…」


『すまない。蘭。
もう、随分前から会社の業績が悪く
銀行からの融資も受けられなくなって
とうとう、会社も家もすべて差し押さえになってしまった。』


大企業のトップにいた父は
こんな弱々しい声で話す人ではなかった


「お母さんは…?」


『母さんは…全てを知って
今朝家を出て行ってしまったんだよ』



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