ながい、愛。


「なんで…?まだ週中だよ……?」


ハンガーに彼女の上着を掛けながら、半分呆然と呟く俺に対して、少し幼い印象の早貴の頬が気分を害したように、ぷくーっと膨れていく。


「だって。会いたかったんだもん。それじゃ理由にならない?…ていうか、恵夢は迷惑だった?」


そんなに、至近距離での上目遣いは狡い。
驚いたことや、会えなかったことの不満なんか、それだけで一気に吹き飛んでしまうじゃないか…。


「迷惑だなんて…そんなはずないよ…俺だって、その…会いたかった」


そう言った俺に満足したのか、早貴はにっこりと笑うと、俺の首に両手を回して、ぎゅーっと抱きついて来た。


「さ、早貴…っ」

「ねぇねぇ?私が来て、どれくらい嬉しかった?」

「や、頼むから…」


せめて、首に抱きついたままの態勢ではなくて、普通にしてもらえないだろうか…?


そんな俺の願いは、早貴から香るフレグランスで粉々に打ち砕かれ…心の中で両手を上げて降参をする。

なんだって、こんなにも可愛い子が、俺みたいなヤツを選んでくれたのは、今も尚謎なんだけれど…。

それでも、こうして無邪気に愛を注いでくれる早貴のことが、俺には必要だった。

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