まぶたにキスして
「歩ける?」
「う、うんっ」
なんでだろう……。
あんなに毎日のように追っかけて彼の瞳に映ろうと必死だったのに。
今は、灯くんの目が見れない。
約5年ぶりに私は大好きな幼なじみの横を歩いているなんて信じられない。
帰り道は、ずっと心臓がうるさくてそればっかりに意識が集中して灯くんとまともに話せなくて。
「着いた」
灯くんの声にハッとして顔を上げれば、自宅前に着いていた。
あ……もう終わってしまう。
灯くんとのせっかくできた時間が……。
「……灯くん、今日は、ごめんね。それからありがとう。助かった!」
「……」
笑ってみて自分の頬が引き攣っているのがわかる。
なんで、うまく笑えないんだろう。
「じゃあ、また学校で──」
灯くんの顔を見ないままそう言って、家の門に手をかけた時だった。