まぶたにキスして
それにしても、いきなりスカートに目を向けるなんて灯くんどうしたんだろうか。
「この間のやつ以外にも、変なやついっぱいいるから少しは気をつけろって言ってんの」
「……あ」
なるほど。
灯くん、そう言うところ、変わっていないんだな。
小さい頃、一緒に遊んでいても何かと心配してくれていたっけ。
私が走ってすぐ転んで怪我ばかりしていたから、よく手を繋いでくれていた。
「オッケー!灯くんが言うならすぐ直す!足首ぐらいでいい?」
「そこまでしなくていい。ていうか絶対丈足りないでしょ」
そんな灯くんのツッコミにふふっと笑みが溢れる。
こんな風に何気ない会話がまたできるようになったのが嬉しくて。
本当はずっと、もっともっと近づきたくて先の関係になりたいけれど、そんなわがままを言ったら、灯くんがまた離れていっちゃうんじゃないかと心配だから。
今は今の幸せをしっかり噛み締めるんだ。
『こんなことするの最初で最後だから』
家の前で私を抱きしめた灯くんは、私が落ち着いて体を離すとそう言った。
あれは私を落ち着かせるために灯くんがしてくれこと。
それ以上の気持ちなんてない、はっきりそう言われた気がした。
……きっと、数年前のあのキスも。