まぶたにキスして
お熱な灯くん

「音桜―!」

「はーい!」

「ちょっといい?」

その日の夕方。

夕飯ができるまで自室のベットでダラダラとスマホをいじっていたらママに呼ばれたので、重い腰を上げながら一階のリビングへと向かう。

「なに?」

キッチンの奥で何やらゴソゴソしているママに声をかける。

「あ、さっきおばあちゃんからまたお野菜たくさん届いてね。津三木さんちに届けて来てくれない?ママお鍋見なきゃいけなくて」

「あーうん、わかった」

「お願いね」

私は部屋に戻って軽く髪を整えてまたリビングに戻って、お裾分けの野菜の入った袋を持って家を出る。

こうやってお隣に色々届けるのは良くあること。

灯くんと遊んでいた頃はもちろん、疎遠になってからも津三木家のインターホンは良く押していた。

灯くんが中学に上がってからは、私の押すチャイムで彼が出て来てくれたことは一回もないけれど。

最初は灯くんが出てきてくれることを期待して押したりもいていたけれど、今はもうインターホンから彼の声が聞こえないことが当たり前になってしまっている。

今日もきっとおばさんの声が聞こえるだろう。

準備が出来てうちを出てから、慣れた手つきでインターホンのボタンを押すと、津三木家にチャイム音が響く。
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