まぶたにキスして

「──はい」

「あ、音桜です。おばあちゃんから野菜たくさん届いたのでお裾──」

いつものようにそう言いながら、目の前のスピーカーから聞こえた声が普段聞くおばさんの声ではないことに気づいて、口元の動きが止まる。

今のって……。

「ちょっと待ってて」

やっぱり……灯くんの声だよね?!

まさか灯くんが出てきてくれるなんて予想外すぎて急に心臓の鼓動が速くなる。

どうしようどうしよう!!

灯くんが出てきてくれるってわかってたらもう少しちゃんと身支度したのに!!

津三木家の門の前でひとりアワアワしていたら、ガチャっと玄関のドアが開けられた。

「あ、灯く──」

大好きな彼の姿が見えて胸を弾ませながら名前を呼びかけたけど、何やら様子がいつもと違う気がする。

お昼に話した時は普通だったけど……。

「灯くん、体調悪い?」

灯くんがこちらに来る前に門を開けて玄関に向かう。

「え……」

私の問いかけに少し驚いた顔をした灯くんがスッと目を逸らす。

「灯くん?」

「……や、その」

「ん?」

「ちょっと微熱あるだけだから」

「え!?熱!?」

そう言われれば、なんだか灯くんの目、トロンとしてる気もする。
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