まぶたにキスして
華の女子高校生になって2ヶ月。
私よりふたつ年上の幼なじみ。
彼が中学に上がったのをきっかけに疎遠になってしまっていたけれど、また昔みたいに仲良くしたい一心で勉強を頑張って、ようやく同じ高校に通うことができた。
思い描いていた再会とは真逆だったけど。
なぜか、灯くんは変わってしまっていたから……。
入学して数日あったある日のこと。
廊下で初めて、うんとカッコ良くなった彼とすれ違って、ずっとこの瞬間を待っていたとドキドキしながら振り返ったとき、
まるで視界に広がる全てがスローモーションになったような感覚で。
『灯くん!』
廊下を行き交う生徒たちが一瞬立ち止まってこちらを見るほどの声で名前を呼んだら、ゆっくり振り返った彼の目が見開いたのをよく覚えている。
確かにあの時、灯くんは私に気づいた。
……はずなのに。
『……えっと、誰?』
明らかに知らないふりをして目を逸らしたんだ。