まぶたにキスして
「なんで……俺、音桜のことたくさん傷つけたのに」
今まで俺が音桜にしてきたことを思い返して、絞り出した声でそういう。
俺はたくさん音桜を傷つけたのに、平気で、キスして欲しいとか言うの。
「えっ?」
俺に押し倒された音桜は、何の話だとポカンとしている。
どうせなら、あんな風に避けておきながら今更こんな風に迫る俺を引っ叩いて、最低だって言って欲しい。
なのに、彼女は全然そうしてこないから。
「……私、灯くんには助けてもらった記憶しかないよ。傷つけられたことなんて──」
「あるだろっ」
思わず声を少し荒げてしまって頭がズキンと痛む。
傷つけられたことないなんて、嘘だ。
俺は、音桜から身体を離してベッドに座り直してから、あの日のことを話した。
思春期になり、年下と仲良くしてることを同級生に見られたくなくて、音桜にひどいことを言ったのにずっと謝らなかったこと。
音桜は、起き上がって黙って俺の話を聞いてくれた。