まぶたにキスして
まぶたにだけじゃなくて
音桜 side
「嘘……やっぱり怒ってるかも」
呆れたようにため息をついた灯くんに、そう言ってみる。
このまま、灯くんと進展がないままなのは嫌だ。
ずっとずっと、こうして話せるのを待ち望んでいたから。
灯くんは「まあ、そりゃそうだよな」と言って後頭部をかいた。
灯くんが熱でぼーっとしているのをいいことに、それをもっと利用しようとしてる自分は、
あの時、私に「もう来ないで」と言った灯くんよりひどいと思う。
だから、おあいこだ。
「どうすれば、許してくれる?……いや、許してもらえるなんて──」
「……だから、キス、して欲しい」
「なっ」
灯くんは、驚いたように声を出して勢いよくこちらを振り返った。
至近距離で視線が絡む。
もう、絶対離したくないの。
もっと、灯くんのその瞳に映っていたいの。
余裕なんて、これっぽっちもないから。