まぶたにキスして

「なあ、まじでそう言うこと言うのやめろ」

「なんで?」

「なんでって……バカ。……キスだけじゃ我慢できなくなるから」

そんなセリフ、ただ私が嬉しくなっちゃうだけじゃないか。

「我慢しなくていいよ」

「あーーそれに、俺、今熱あんの。うつす」

「いいよ!私、絶対風邪ひかないし!知ってるでしょ?バカは風邪ひかないの!もし熱出たとしても、灯くんからもらう熱なら大歓迎なんっ────」

それはとても一瞬の出来事だった。

話してる途中だったのに。

二度も灯くんに押し倒されて。

目の前は大好きな人の整った顔でいっぱいで。唇に、柔らかいものが触れた。

……灯くんに、キスされてる。

夢見心地で、頭がふわふわしてしまう。
これは本当に現実なのだろうか。

ゆっくりと離れたけど、それでも至近距離なのは変わらなくて灯くんの熱い吐息が伝わる。

「好き」

「っ?!」

こんな距離で真っ直ぐ見つめられての「好き」は心臓が爆発してしまう。

大好きな人に、好きだって言われることってこんなに嬉しいんだ。

止まっていた涙がまた溢れてくる。
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