まぶたにキスして
この日のために、うんとイメージトレーニングをしてきた私がそう簡単に怯むわけなんてなくて。
『え、私だよ!日坂音桜!幼なじみの!小中同じだった!てか、家隣じゃん!』
そう言えば『あぁ……』と小さく呟いてから『ごめん、あんまり覚えてない』と言って行ってしまった。
昔は「音桜」ってしょっちゅう優しく名前を呼んでくれていたのに。
覚えてないなんて絶対嘘に決まっている。あんなに長い時間、一緒にいたんだから。
なんで灯くんは、あんな嘘ついたんだろう。
それからと言うもの、学校で彼を見つけるたびに声をかけているけど、ノーリアクション。
いや、というか、かなり迷惑そう。
知らない先輩にまで、コソコソとストーカーだと言われてしまうし。
実際そうなのかもしれないけど……。
でもでも!
昔から家が隣同士で、物心ついた頃にはずっと私のそばに居た灯くんとの思い出は私の心の中に今も鮮明にある。