まぶたにキスして
ピンチです!
「うわ、何あれ」
放課後、帰る支度をしながらみんなとたわいもない会話をしてると、グループのひとりが窓の外を見て呟いた。
なんだなんだと、みんなが窓の外に目を向ける。
「ほらあそこ」
「うわーー、あれ、道永さんだよね?」
校舎の影に隠れて向かい合う男女。
そこには私たちと同じクラスの道永さんと、先輩っぽい男の人がいた。
ふたりが何を話しているのか、3階であるここからは聞こえないけれど、空気がよろしくないことはなんとなく伝わってくる。
何やら言い争っているようにも見えて。
「あれ、もしかして道永さんの元カレじゃない?最近別れたのにしつこいって聞いたよ」
「え、まじ?きもーー」
グループの1人がそう言った瞬間、
「わ、なんかヤバそうじゃない?」
佳菜子のその声で再び目を向ければ、男の人が道永さんの腕を乱暴に掴んでいた。