花吹雪~夜蝶恋愛録~
あぁ、あたしは今、こいつに慰められてるのか。

しかし、犬に同情されていると思うと、何だか笑えてくるから不思議だった。



「ナオキは最初からあたしなんて見てなかった。わかってたの。でも、だからこそ、少しでもあたしの方を見てほしくて、お店に通ってた」

「………」

「バカだって笑えばいいよ。むしろ、笑ってくれた方が気が楽になるし」


自嘲気味に言ったセナ。

けれど、陸はひどく真面目な顔をして、



「笑いませんよ。笑えるわけがありません」


と、はっきりと言う。



「辛そうな顔してるじゃないですか。それって真剣に恋をしてるからでしょ? 俺はそんなセナさんの気持ちをバカにしたりしたくない」


仮にもホストのくせに、青臭いことを。

そう思う反面で、今までずっと、みんなから否定されていた気持ちを、陸だけが肯定してくれたのだと気付く。


セナが何も返せずにいると、瞬間、立ち上がった陸は、手を差し伸べてきた。



「行きましょう。送ります」

「えっ」

「ほら、立ってくださいよ。セナさん、女の子なのに、こんな時間にいつまでもこんな場所にいたら、悪い人たちに何をされるかわからないじゃないですか」


陸はそう言って、差し伸べてきた手でセナの腕を掴んだ。

そのまま半ば無理やり立たされる。
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