花吹雪~夜蝶恋愛録~
「ちょっ、あんた仕事は!? パシられてる途中でしょ!」

「いいんです」

「よくないでしょ!」

「いいんですよ、別に。『PRECIOUS』に俺の代わりなんていくらでもいます。てか、俺なんていてもいなくても同じだし。でも、今セナさんを送っていけるのは俺しかいないじゃないですか」


陸はすがすがしく言い放つ。

が、それに素直に応じるわけにもいかない。



「クビになるよ!」

「でしょうね」


犬のように笑った陸の顔を見て、もう何を言ってもムダなのだろうなと、セナもついに諦めた。


陸に手を引かれ、大通りに出る。

止めたタクシーにふたりで乗り込み、セナは自宅の住所を運転手に告げた。



あたし、何やってんだろう。



ひどく疑問に思ったが、でも泣きすぎた疲れもあって、それ以上は考えることを放棄した。

考えたところで気持ちが沈むだけだし、と。


陸が隣で歌う下手くそな鼻歌を聴きながら、セナは静かに目を閉じた。


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