花吹雪～夜蝶恋愛録～
スマホには、ナオキと樹里から、山のような着信とメッセージが。

セナは何も言わずに帰ってしまったので、それは当然だろうけど。


ぼうっと画面を眺めていたら、急にスマホが震え、セナは「わっ」と驚いた拍子に指が当たって、通話ボタンをタップしてしまった。



「セナ！　やっと出た！　今どこ!?　何やってるの!?　心配したんだからね！」


樹里の大声に、セナは反射的に「ごめん」と言ってしまった。

電話口の向こうの樹里は、大きなため息を吐く。



「聞いたよ。未収分のことで悩んでたんだよね？　何でもっと早く言ってくれなかったのよ。でも大丈夫だよ。それなら私に任せて」

「え？」

「私が代わりに払っておくよ。返してくれるのはいつでもいいから。その代わり、もうホストなんかとは縁を切ってよ」


お金は立て替えてくれる？

で、ナオキとは縁を切れって？


樹里が、出会った頃からいつも自分に優しくしてくれていたことを思い出す。



「樹里ちゃんは、何であたしにそこまでしてくれんの？」

「セナのことが大切だからに決まってるじゃない」


樹里ははっきりとそう言った。



「別に風俗が悪いとは言わない。汚いとも思わない。だけど、自分から望んでやるわけじゃないなら、そんなのやめてほしいと思ってる」
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