花吹雪~夜蝶恋愛録~
大袈裟に喜んで見せておく。



黒川がどんな男であろうとも、彩にとっては一番の太い客だ。

(のが)すわけにはいかないから、ご機嫌を取るしかない。


しかし一方で、高槻は、こんな私のことをどう思っているのだろうかと思う。


金持ちに媚びるバカな女だと思っているだろうか。

それとも、そんな風にしか生きられない、哀れな女だとでも思われているのか。




いつも高槻に見られている右半分だけが熱かった。

いつかその視線に焼き殺されるのではないかと思うほど、熱くて熱くてたまらない。


あぁ、でも、そんな風に死ねるなら、いっそ幸せなのかもしれない。



「彩。彩は本当に美しいな。まるで宝石のようだ」


黒川に撫でられる。



心ここにあらずの彩は、高槻だったらどうやって女の相手をするのだろうかと考えてみた。

でもちっとも想像できない。


何より高槻の笑顔すら見たことがないのだから、女の相手どころか、その私生活すら彩には想像できなかった。



「彩を誰にも渡したくないよ」


黒川のしわがれた声が耳に寄せられる。

所詮はこれが現実で、私には他に何もないというのに。


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