花吹雪~夜蝶恋愛録~
でも、やっぱり豊原は怒らない。
つくづく不思議な人だなと、美咲は思った。
普通は嫌な顔くらいしてもいいものを、よっぽど温厚なのだろうか。
その時、ボーイから、「美咲さん、お願いします」という声がかかった。
せっかく、今までで初めて楽しかったのに、もう終わりだ。
また違う卓から卓へと、ヘルプとしてぐるぐるとまわらなければならないのか。
消沈した気持ちが顔に表れていたのか、そんな美咲を見た豊原はおかしそうに笑って言った。
「おい、こいつに場内を入れてやれ」
「え?」
驚いて顔を向ける。
「お前が時間を過ぎてもまだ遊びたがっている小学生みたいな顔をしていたから」
自覚はなかったが、少し恥ずかしくなった。
と、同時に、入店して初めての場内指名をもらえたことが、ひどく嬉しかった。
「いいんですか? ナメてる私なんかで」
「あぁ。あまりナメられたことのない人生だったもんで、こういう方が新鮮だ」
「うわー、嫌味」
言いながらも、驚くほど普通に話せているなと思った。
もしかしたら私は今まで、人の真似ばかりしようとしていたからダメだったのではないか、と。
自分は自分でいいのだと、豊原と話して初めて美咲はわかった気がした。
つくづく不思議な人だなと、美咲は思った。
普通は嫌な顔くらいしてもいいものを、よっぽど温厚なのだろうか。
その時、ボーイから、「美咲さん、お願いします」という声がかかった。
せっかく、今までで初めて楽しかったのに、もう終わりだ。
また違う卓から卓へと、ヘルプとしてぐるぐるとまわらなければならないのか。
消沈した気持ちが顔に表れていたのか、そんな美咲を見た豊原はおかしそうに笑って言った。
「おい、こいつに場内を入れてやれ」
「え?」
驚いて顔を向ける。
「お前が時間を過ぎてもまだ遊びたがっている小学生みたいな顔をしていたから」
自覚はなかったが、少し恥ずかしくなった。
と、同時に、入店して初めての場内指名をもらえたことが、ひどく嬉しかった。
「いいんですか? ナメてる私なんかで」
「あぁ。あまりナメられたことのない人生だったもんで、こういう方が新鮮だ」
「うわー、嫌味」
言いながらも、驚くほど普通に話せているなと思った。
もしかしたら私は今まで、人の真似ばかりしようとしていたからダメだったのではないか、と。
自分は自分でいいのだと、豊原と話して初めて美咲はわかった気がした。