花吹雪~夜蝶恋愛録~
豊原は、とにかく不思議な人だ。



普通は話しているうちに、どういう仕事をしているかだとか、どこに住んでいるかだとか、そういう人となりに触れる話題が出るものだが、まったくそういう話にはならなず、いつもくだらない会話に終始する。

美咲も聞くに聞けないので、謎のまま。


大体は、美咲が言いたいことを言い、豊原がそれに対しておもしろおかしく相槌するだけ。


それでもどういうつもりなのか、豊原は、少なくとも10日に一度は来店し、美咲を指名してくれるのだ。

仕事の愚痴とか、日常での嫌なこととか、ないのだろうか。



何のために『Rondo』に通い、自分を指名してくれるのか、まるでその真意がわからない。



戸惑いながらも、反面で、徐々にキャバクラ嬢という仕事に慣れていく自分。

垢抜けたと思うし、すっかり板についたなとも思う。


それがいいことなのかどうなのかは、わからないけれど。


< 44 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop