花吹雪~夜蝶恋愛録~
「えっと、あの」


間が持たなくて何か言わなければとは思うのに、焦れば焦るだけ言葉が出なくなる。

これで本当に『Rondo』のナンバーワンなのかと、自分で思うけれど。



「じゃあ、私はこれで」


逃げたくなって頭を下げたが、しかし高槻の「待って」という声に阻まれた。



「もしこのあと帰るだけなら、一緒に食事に行きませんか」

「えっ」


今まで一度も喋ったことがなかったのに?

なのに、いきなり食事の誘い?


何が何だかわからずパニックに陥りそうだったが、しかし断るという選択肢はなかった。



「彩さんが嫌じゃなければですが」

「い、行きたいです」


どもりながら蚊の鳴くような声しか出せなかった彩を、高槻はまた笑う。

恥ずかしくて恥ずかしくて、穴があったら入りたいとすら思った。


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