花吹雪~夜蝶恋愛録~
バカバカしいほど華やかで、呆れるくらい簡単に大金が舞う世界。
さくらは地方から短大進学のために出てきて、ひとり暮らしの生活費を稼ぐためのバイトと割り切り週3で『Rondo』で働き始めて、1年と少し。
慣れはしたが、染まりたいなどとは露ほども思わない。
どうせバイトだし、という気持ちもあり、さくらは、仕事に身など入らなかった。
たまに、物好きな客に指名されたりすることもあるが、ほとんどがヘルプだ。
確かに稼ぎは少しでも多い方がいいが、でもその分、苦労も半端じゃないことは、他のお姉さんたちを見ていればわかるため、自分はそうはなれないとも思うから。
今日もボーイに呼ばれるままに、色々な卓につけまわされた。
正直、さくらの目から見れば、客は――男は、どいつもこいつも滑稽で、女に踊らされているようにしか見えない。
そんな男たちのために、わざわざ自分の身を削りたくはないのだ。
相変わらず、私は安定志向だなと、いつも思うことをまた思った。
腕時計を一瞥し、あと30分ほどで帰れるなという頃、すれ違いざまにトシは、
「今晩、行くから」
と、声を潜めて言った。
トシはこの店のボーイで、実は偶然にも、同じ高校の同級生だった。
で、今はセフレという関係が一番適切だろうと思う。
別に自分の担当じゃないので、色恋管理をされているというわけでもなく、本当にただ、セックスをするだけ。
何だかなぁ、と思ったが、慣れ親しんだ関係を断る理由も特にない。
さくらは、顎先だけでうなづいて、次に呼ばれた卓に向かった。