花吹雪~夜蝶恋愛録~



もうすぐ短大の夏休みが終わるという頃。



2年生のさくらにとっては、就職活動のことを考える時期だ。

目標の高い子は昨年から動いていたりもするので、かなり出遅れてはいるが、でもそろそろ本気にならなきゃ、さすがにまずい。


単位はきちんと取っているし、夏休み中にはたくさん出勤して『Rondo』で稼いだので、さて、これからどうしたものかと首をひねった。




『Rondo』は『Rondo』で、あれから少しの変化があった。




マネージャーがどこからかスカウトしてきたらしいユカという期待の新人が入った。


可愛いし、客も持っているし。

で、なぜかその子の担当は、トシになったらしい。



バイトのさくらにはほとんど関係のない話だが、それがトシへの期待でもあるとわかっているからこそ、また少しトシとの距離を感じた。



「ねぇ、さくらちゃん。ユカちゃんのこと、どう思う?」


七海に聞かれた。

どうもこうもないと、さくらは思ったのだが。



「私、あの子、正直あんまり好きになれないんだよね。男に媚びてる感じがセナにそっくりでしょ」


実際、ユカは、客にだけではなく、担当のトシにもべったりだ。

べったりというよりは、カレシに甘えるカノジョみたいな。


でも、キャストの管理もトシの仕事のひとつなわけで。



「多分、あの子、トシくんのこと好きでしょ」

「でしょうね」

「っていうか、トシくんが色掛けてるよね」


あぁ、やっぱりか。

七海に言葉にされて、なぜかすっきりした自分がいた。
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