花吹雪~夜蝶恋愛録~
ただ愛する人に愛されたかっただけだったのに。
「くっそー。もうちょっと稼げてたはずなのにぃ」
ロッカールームで、セナは今しがた受け取ったばかりの、給料の入った茶封筒の中身の数を確認し、大きなため息を吐いた。
ナンバースリー。
でも、その地位に興味はなく、セナにとっては稼ぐ札束の分厚さの方が重要だった。
「お疲れ、セナ」
顔を向ける。
セナのひとつ年上で、姉のように慕っている、ナンバーワンの樹里がほほ笑む。
「どうしたの? 元気ない顔で。今月、同伴、頑張ってたじゃない」
「そうだけど、これじゃあ、足りないし」
「何が?」
「もっといっぱいお金がほしいって意味」
セナは、給料から支払いを差し引いた額をざっと頭で計算し、口を尖らせた。
でも、不満を言ったところで、この給料袋の中身が増えるわけでもない。
セナは手に持つそれをバッグに押し込め、気持ちを切り替えた。
「ねぇ、樹里ちゃん。給料もらったんだし、たまには飲みに付き合ってよ!」
「えー?」
「いいじゃん、いいじゃん。ストレス発散しなきゃっしょ?」
「あんたねぇ。今、足りないとか言ってたくせに」
「それはそれ、これはこれ」
セナの誘いの意味がわかっているからか、樹里はあからさまに嫌そうな顔をする。
「悪いけど、わかってるでしょ? 私、ホスト嫌いなの」
セナは、いわゆるホスト狂いというやつだ。
それも典型的なタイプで、掛けで飲んでは、稼いだ給料のほとんどが一気に消えて行く、悪循環。
それでも会いたい男がいる。