花吹雪~夜蝶恋愛録~
持ってこられたビールで乾杯する。
が、それを味わう余裕はまったくなかった。
「彩さん、遠慮せずに好きなもの頼んでくださいね」
そういえば食事にきたのだった。
目の前に高槻がいるだけで胸いっぱいで、食欲なんてまるでなかったが、そうとも言えないので、
「じゃあ、これを」
と、彩はメニューの中で目についたものを適当に指差した。
しかし、店内は暗がりだ。
「どれ?」
高槻に近い位置で覗き込まれる。
そのままうかがうように視線を上げた高槻と、近すぎる位置で目が合った。
その瞳の中にいる自分が見える。
「あ、や、えっと」
何か言わなくてはと思うのに、先ほどまでどれを指差していたのかもわからないくらいに焦り、言葉に詰まる。
もはやどうしたらいいのかすらわからなくて、彩は泣きそうだった。
少しの間を置いて、高槻は息を吐きながら椅子の背もたれに背中を付けた。
「調子が狂うな。そんな真っ赤な顔しないでくれ」
迷惑そうに言った高槻に、慌てる彩。
「ご、ごめんなさい」
「いや、可愛すぎて困るって意味だよ」
「え……」
それってどういう意味?
と、思ったのに、相変わらず言葉が出ないままなので、聞き返すこともできない。
高槻の目に映る自分は今どんな風に見えているのだろうかと思うだけで、彩は指一本も動かせなくなってしまった。
が、それを味わう余裕はまったくなかった。
「彩さん、遠慮せずに好きなもの頼んでくださいね」
そういえば食事にきたのだった。
目の前に高槻がいるだけで胸いっぱいで、食欲なんてまるでなかったが、そうとも言えないので、
「じゃあ、これを」
と、彩はメニューの中で目についたものを適当に指差した。
しかし、店内は暗がりだ。
「どれ?」
高槻に近い位置で覗き込まれる。
そのままうかがうように視線を上げた高槻と、近すぎる位置で目が合った。
その瞳の中にいる自分が見える。
「あ、や、えっと」
何か言わなくてはと思うのに、先ほどまでどれを指差していたのかもわからないくらいに焦り、言葉に詰まる。
もはやどうしたらいいのかすらわからなくて、彩は泣きそうだった。
少しの間を置いて、高槻は息を吐きながら椅子の背もたれに背中を付けた。
「調子が狂うな。そんな真っ赤な顔しないでくれ」
迷惑そうに言った高槻に、慌てる彩。
「ご、ごめんなさい」
「いや、可愛すぎて困るって意味だよ」
「え……」
それってどういう意味?
と、思ったのに、相変わらず言葉が出ないままなので、聞き返すこともできない。
高槻の目に映る自分は今どんな風に見えているのだろうかと思うだけで、彩は指一本も動かせなくなってしまった。